Contents【後編】貴社のサイトは大丈夫？ダークパターンで信用を失わないために
近年、ウェブサイトやアプリ上で、消費者の意図しない行動を促し、企業側に有利に誘導する「ダークパターン」と呼ばれる設計手法が問題視されています。成果を追求するなかで、知らず知らずのうちにこうした手法を取り入れてしまうケースも見受けられますが、結果として消費者の信頼を損ない、企業にとってはビジネス上のリスクとなるおそれがあります。本コラムでは、前編・後編に分けてダークパターンの概要と具体的な類型、消費者被害の状況、法規制の動向を踏まえながら、企業が取るべき対応策について幅広く解説します。
目次
- インターネット上に潜む罠 ― 「ダークパターン」
- ダークパターンの類型と具体例
- クッキーバナーでも使われるダークパターン
- ダークパターンによる消費者被害の状況
- ダークパターンが使われる背景
- ダークパターンに対する法規制の状況
- 貴社は大丈夫？ダークパターンはビジネスリスク
- ダークパターンを避けるための対策
- おわりに
※１～５の前編は、こちらからご覧ください
６．ダークパターンに対する法規制の状況
6-1.欧米におけるダークパターン規制の状況
消費者のオンライン上での行動に深刻な影響を及ぼし、被害をもたらすダークパターンは、もはや放置できない問題となっています。このような背景から、各国の規制当局は消費者保護の観点からダークパターンを問題視し、法的な規制を強化し始めています。
欧州では、不公正取引行為指令（UCPD：Unfair Commercial Practices Directive）に基づき、消費者を不当に誘導したり欺いたりする商取引が包括的に規制されています。さらに、デジタルサービス法（DSA：Digital Services Act）では、オンラインプラットフォーム上でのダークパターンの利用が明示的に規制されるなど、規制は一層強化されています。加えて、一般データ保護規則（GDPR：General Data Protection Regulation）においても、個人データの取得・取扱いに際して用いられるダークパターンは、透明性・公正性の原則や同意取得に関する適法要件に反するものとされ、規制の対象となっています。
米国では、連邦取引委員会（FTC）が、商取引における不公正または欺瞞的な行為を禁じるFTC法第5条に基づき、ダークパターンを広範囲に取り締まっています。一方、州レベルでも規制が進んでいます。カリフォルニア州消費者プライバシー法（CCPA）をはじめ、多くの州のプライバシー・データ保護法では、ダークパターンを通じて取得された同意は無効とされる旨が明確に規定されています。
6-2.日本におけるダークパターン規制の状況
現在、日本には、ダークパターンを正面から包括的に規制する法律は存在しません。ただし、特定のケースに該当する行為については、以下のような既存法令で一部規制の対象となる場合があります。
〇 特定商取引法
通信販売における誇大広告などの不当表示が禁止されています。さらに、通信販売において、定期購入など誤認を招く商法が問題視され、2022年6月1日に施行された改正法では、通信販売の最終確認画面において商品の分量や契約期間、価格、支払時期、引渡し時期、申込みの有効期間、解約条件などの重要事項の明示が義務付けられ、同時に、契約申込みとなる行為について誤認を誘導するような表示が禁止されました。
〇 景品表示法
従来の優良誤認表示および有利誤認表示の禁止に加え、2023年10月1日からはインフルエンサーなどの第三者が事業者の広告であることを隠して紹介する行為、いわゆる「ステルスマーケティング」も不当表示として禁止されました。
〇 個人情報保護法
個人情報保護法では「偽りその他不正の手段」による個人情報の取得を禁止しており、ダークパターンを用いて収集された情報がこの規制に抵触する可能性があります。
加えて、2025年1月の報道によれば、公正取引委員会が独占禁止法を用いた規制の可能性についての調査研究に着手したことが明らかとなりました。これは、ダークパターンを競争政策の観点から、欺瞞的な顧客誘引や優越的地位の濫用として捉える動きであり、今後、独禁法上の新たな規制対象となる可能性を示しています。
記事の続きは、東商マイページ
「会員限定コンテンツ」に
掲載しております
はじめてユーザー登録する方
記事の閲覧には東商マイページのユーザー登録（無料）が必要です。
※既に東商会員の方も、別途マイページのユーザー登録が必要です。
最短3分で登録可能！
事務局長 石村 卓也
株式会社インターネットイニシアティブ ビジネスリスクコンサルティング本部ビジネスリスクコンサルティング部 副部長。外資系IT企業で営業・マーケティングを経験後、2007年に渡米。現地SIerで多数のITインフラ整備やセキュリティ案件を統括し、ニューヨーク州弁護士資格も取得。2020年1月から現職。企業のマーケティング部門及び法務・コンプライアンス部門の両方の視点から、プライバシー保護やダークパターン対策への具体的なアドバイスを提供。
アンケートにご協力ください
ご記入いただいた内容については今後の掲載内容の改善に利用させていただきます。
q.このページの情報は役に立ちましたか？
