Contents2024・2025年度日本経済見通し

サムネ画像

 

リベンジ消費は不発

新型コロナウイルス感染症の影響で急速に落ち込んだ個人消費は、新型コロナの収束とそれに伴う社会経済活動の正常化に伴い急回復することが期待されていた。しかし、コロナ禍で抑圧されていた消費が一気に拡大する現象、いわゆる「リベンジ消費」は顕在化していない。2023年5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に変更されたが、GDP統計の民間消費は2023年4-6月期から2024年1-3月期まで4四半期連続で前期比マイナスとなり、逆に停滞色を強めている。

社会経済活動の正常化にもかかわらず消費が低迷している一因は、言うまでもなく物価高による悪影響である。しかし、前年比で2%を超える物価上昇は2022年4月に始まっており、そうした中でも2022年度中の個人消費は比較的堅調に推移していた。この背景には、コロナ禍の度重なる行動制限に伴う消費水準の大幅低下、特別定額給付金の給付などの各種支援策によって、家計の貯蓄率が高水準となっていたことがある。

家計貯蓄率はコロナ禍前の2015~2019年平均で1.2%だったが、2020年4月の緊急事態宣言の発令によって消費が急激に落ち込んだこと、特別定額給付金の支給によって可処分所得が大幅に増加したことから、2020年4-6月期に21.1%へ急上昇した。その後、行動制限の緩和による消費の持ち直しや物価高の影響で貯蓄率は低下したが、2022年まではコロナ禍前に比べれば高水準を維持していた。このため、物価高の逆風を受けながらも高水準の貯蓄率を引き下げることにより、個人消費は堅調を維持することができたのである。

しかし、家計貯蓄率は2023年入り後にコロナ禍前を下回る水準まで大きく低下し、2023年7-9月期(▲0.1%)、10-12月期(▲0.3%)には小幅なマイナスとなっている(図表1)。貯蓄率引き下げによる消費押し上げ効果はすでに消滅している。

 

記事の続きは、東商マイページ
「会員限定コンテンツ」に
掲載しております

はじめてユーザー登録する方

記事の閲覧には東商マイページのユーザー登録(無料)が必要です。

※既に東商会員の方も、別途マイページのユーザー登録が必要です。

最短3分で登録可能!

ユーザー登録がお済みの方

既に東商マイページのユーザー登録がお済みの方は、下記ボタンよりログインのうえ閲覧ください。

斎藤 太郎
【プロフィール】
斎藤 太郎

ニッセイ基礎研究所 経済調査部長

 

1967年生まれ、1992年京都大学教育学部卒業、同年日本生命保険相互会社入社、1996年ニッセイ基礎研究所、2012年より現職。専門は日本経済と雇用の分析。2012年度〜神奈川大学非常勤講師。日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」で過去9回、予測的中率の高い優秀フォーキャスターに選出。

アンケートにご協力ください

ご記入いただいた内容については今後の掲載内容の改善に利用させていただきます。

q.このページの情報は役に立ちましたか?

一覧へ戻る