Contents2023年 日本経済の見通し 世界経済減速も国内は回復基調 内需とインバウンドが下支え

9面 インバウンド

 2023年は、海外経済悪化の影響で輸出・生産が停滞して減速するものの、サービス消費や設備投資などの内需とインバウンドが支えとなり、景気回復を維持すると予測している。コロナ禍の経済的影響がほぼなくなり、その後の成長戦略が問われる年となるだろう。

※この記事は東商新聞2023年1月1日号に掲載されたものです

 

コロナ禍からの回復に遅れ  32年ぶりの円安

 22年の日本は年初と夏場に新型コロナのオミクロン株の感染拡大に見舞われた。政府は21年のように緊急事態宣言を出すことはなかったものの、まん延防止等重点措置の導入や感染を懸念する人々が行動を自粛したことにより、夏場まで個人消費は停滞気味に推移した。また、中国がゼロコロナポリシー(感染拡大を防止するため、感染発生地域をロックダウンして集団検査や移動制限を課す政策)を継続していたことも、日本経済の回復を遅らせる要因になった。4月には上海のロックダウンにより、自動車部品や電子部品などの供給が滞り、日本の製造業生産が大きく落ち込む場面があった。
 国内のオミクロン株まん延は9月に落ち着き、政府は10月から旅行需要を喚起する施策として「全国旅行支援」を導入した。国境での水際対策についても10月から大幅に緩和され、コロナ禍で低迷していたサービス消費やインバウンド観光客数が回復することへの期待が高まっている。
 他方、グローバルインフレは日本にも影を落とし始めている。商品市況の高騰を受け、22年初の輸入物価は前年比で4割以上も上昇した。米国の金利上昇とともに秋にかけて進んだ円安も、輸入コストを膨らませている。年初に110円台だった円ドル相場は、10月に150円台と32年ぶり(1990年頃)の水準まで円安が進み、政府・日銀は約24年ぶりの円買い介入に踏み切った。商品市況高と円安の相乗作用で、消費者物価指数は消費税率引き上げ時を除けば31年ぶりに前年比3%を上回った。生活必需品の価格上昇は低所得者層を直撃しているほか、輸出比率が相対的に低く価格転嫁が困難な中小企業の業績を圧迫している。
 岸田政権は、10月末に財政支出39兆円に達する経済対策を決定した。これまでのガソリン価格の激変緩和措置に加えて、電気・ガス料金負担の緩和などを内容としている。しかしながら、岸田政権の支持率は低迷しており、中長期的な日本経済の成長力強化に向けた経済政策は停滞が懸念される。新型コロナ感染の第8波への警戒も怠れず、日本は内外に不安を抱える中で新たな年を迎えている。

 

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【プロフィール】
中信 達彦

みずほリサーチ&テクノロジーズ 調査部 経済調査チーム エコノミスト

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